電通「2019年 日本の広告費」から見るウェブメディア広告市場の急拡大。とうとう2兆円超えに
この記事のサマリー
- マスコミ四媒体広告費やプロモーションメディア広告費は減少傾向
- インターネット広告費がテレビメディア広告費を超え、2兆円の大台を突破
- インターネット広告費は、媒体費と制作費の差が広がっている
目次
2020年3月11日に、電通から「2019年 日本の広告費」が発表されました。これは電通が毎年発表しているメディア別の広告費データの2019年版(1月〜12月の集計)です。
2019年のデータで注目すべきは、次の3点です。
- 2019年の総広告費が6兆9,381億円(前年比101.9%)に
- インターネット広告費がテレビメディア広告費を超え、はじめての2兆円超え
- 紙メディアの広告費の落ち込みが顕著に
では、それぞれを詳しく解説しましょう。
1. 2019年の総広告費が6兆9,381億円(前年比101.9%)に
出典:「2019年 日本の広告費」解説―インターネット広告費が6年連続2桁成長、テレビメディアを上回る
2019年全体で、総広告費が6兆9,381億円(前年比101.9%)となり、8年連続のプラス成長となりました。
しかし、10月からの消費税増税の本格的な影響が出始める前にも関わらず、伸びが鈍化した印象です。また、新型コロナウイルスによる経済活動の停滞から、2020年はマイナス成長になることが予想されます。
よく「不景気のときは、広告費から削られる」と言われます。あとで説明するように、不景気の中でもインターネット広告費は成長が続くと思いますが、マスコミ四媒体広告費やプロモーションメディア広告費は大幅な減少を覚悟する必要があるでしょう。
2. インターネット広告費がテレビメディア広告費を超え、はじめての2兆円超え
出典:2019年 日本の広告費
インターネット業界にいる者として、特に驚いたのがこのデータです。
インターネット広告費が2兆1,048億円となり、とうとうテレビメディア広告費を超えたこと、さらに、2兆円の大台を突破したことです。マスコミ四媒体広告費が5年連続の減少だったのに対し、インターネット広告費は堅調に伸び、ついに単独で2兆円を超えました。1兆円を超えたのが2014年ですので、市場規模が5年で倍になったことになります。
おそらく向こう数年で(早ければ2020年に)、インターネット広告費がテレビメディア広告費だけでなくマスコミ四媒体広告費の合計(2兆6,094億円)を超えることが予想されます。
なお、インターネット広告費の内訳を見ると、
- インターネット広告媒体費 1兆6,630億円(前年比114.8%)
- 物販系ECプラットフォーム広告費 1,064億円(今年から新設)
- インターネット広告制作費 3,354億円(前年比107.9%)
となります。
一見、市場が順調に広がっているように見えるインターネット広告費ですが、筆者が気になっているのは、媒体費と制作費の差が大きく、年々広がっていることです。インターネットのメディアとしての価値は、他のメディアと同じように「制作」という部分が支えており、制作そのものの市場規模の拡大が今後の課題と考えます。
なお、媒体費のうち、マスコミ四媒体由来のデジタル広告費は715億円(前年比122.9%)と試算されており、既存媒体からのデジタルシフトがますます進んでいるといえます。筆者の経験上も、マスメディアからのデジタルクリエイティブの依頼が年々増えている印象です。
3. 紙メディアの広告費の落ち込みが顕著に
出典:2019年 日本の広告費
あらゆる分野でデジタル化が進んでいる現在、紙メディアの広告費も落ち込みが続いています。たとえば、
- 折込 3,559億円(前年比91.0%)
- DM(ダイレクト・メール) 3,642億円(前年比99.0%)
- フリーペーパー・電話帳 2,110億円(前年比92.3%)
- POP 1,970億円(前年比98.5%)
となっており、マスコミ四媒体とともに、市場規模が縮小傾向になっています。
今後ますます、これらの分野もインターネットやデジタルサイネージの活用が急務となってくるでしょう。
なお、同じくプロモーションメディア広告費に分類されるもののうち、屋外広告や交通広告はほぼ前年並みです。イベント・展示・映像ほかは5,677億円と大幅増ですが、これは2020年に開催予定だった東京オリンピックの効果が大きいでしょう。
しかし、新型コロナウイルスの影響で東京オリンピックも延期になり、大小さまざまなイベントが中止となっていることから、2020年は大幅な落ち込みが予想されます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
企業のデジタルシフトやデジタルトランスフォーメーションが進む中、広告の世界も放送から通信へ、紙からインターネットへ、オフラインからオンラインへと急速に移行しています。
中小企業であっても、このような流れに乗り遅れないことが、広告宣伝費の効率的かつ効果的な利用につながることを意識しておきましょう。
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